社会人になってかれこれ30年。敬語を正しく使えているかと言われると、自信はありません。なんとなく、周りの人が使っている言葉が正しいだろうから、同じように使っていたら安心というあいまいな気持ちで使っています。一度見直すべき、学び直しすべきだと思いつつ、ようやく1冊の本を読み始めました。
野口さんは日本語教師で、外国人に日本語を教える際に気付かれたことを、現在日本人が使っている言葉遣いと照らし合わせながら、間違った敬語について詳しく説明されています。「一般動詞」、「サ変動詞」など、何も考えずに話している母語にそのような文法に関する言葉があることを知りました。
お声がけください という誤用
日常、「お声がけ」「お声がけください」という言葉を耳にしたり、目にしたりするのですが、この本によりますと「声がけする」、「声がける」という動詞はないとのことです。手持ちの電子辞書で調べてみると、やはりありませんでした。なのに、とても多用している現実は、どうなっているのでしょうか。(ちなみに、「声をかける」は辞書に載っています。)
ここから、調べたり、考えたりしてみます。
ブログなどで使われている「お声がけ」
ブログなどで「お声がけ」などが使われている文面から、意味を予想、考えてみました。
お声がけください:(読み手に)参加などの申し込み、問い合わせ、意見を伝えることなどをお願いする
お声がけを頂く :(仕事などを第三者から)指名される、依頼される
○○(人)のお声がけ :接客のためなどで、お客様への言葉での働きかけ、おもてなし
○○(プロジェクト、イベントなど)にお声がけいただく:参加を求められる、依頼される、打診される
声かけ(声がけ):(家族へ何か意図をもって)話しかけること
そして、ChatGPTさんにも、問い合わせしてみました。
A. from ChatGPT
「声がけ」や「声かけ」という言葉は、日本語の中で比較的新しい表現です。これらの言葉が具体的にいつから使われ始めたのかを示す正確な年代を特定するのは難しいですが、一般的には2000年代初頭から中頃にかけて、特に教育や子育ての文脈で広まりました。言葉の使用が増えた背景には、子どもとのコミュニケーションや支援方法が注目されるようになったことがあります。
またこちらも聞きました。
A. from ChatGPT
「お声がけ」という表現は、ビジネスやフォーマルな場面で使われることが多いです。これは、相手に対して丁寧に呼びかける時に使われる言葉です。「お声がけください」という表現も、相手に対して何かを依頼する際に使われます。
この「お声がけ」という言葉も、比較的新しいもので、主に1990年代以降に一般的に使用されるようになったと考えられます。丁寧な言葉遣いや礼儀を重んじる文化の中で、相手に対する配慮を示す表現として定着してきました。
「お声がけ」「声かけ」は、最近使用されるようになった表現で、教育やビジネスの分野で頻繁に使用されるようになったということです。科学技術、情報の発達により、対面などのアナログだけでなく、メールやインターネットを通じた個人間のコミュニケーションが頻繁となり、伝える早さも加速しました。
ビジネスやフォーマルの場では、階級、地位、年齢が自分より上の人に対する礼儀、目上の人を敬う慣習もあり、人への配慮の気持ちを言葉は存在します。「お声がけ」は相互関係を円滑にし、高速なコミュニケーションが現実となり、維持するための言葉なのかもしれません。
一対一だけでなく、不特定多数を含む相手への言葉も増え、あらゆるケースを想定し、カバーする便利な言葉と思います。
本来の表現は何か
「お声がけください」ではなく、「お知らせください」「ご連絡ください」などを使います。人を思いやる行為が発展し、丁寧なイメージをつけ、そっけなさをなくすために「お声がけください」を使い始めたのでしょうか。
「お声がけ」だけの場合は、「お誘い」「おもてなし」「お心遣い」などの言葉を思い浮かべます。「お誘い」をもらったと素直にいうと、自慢していると人から思われそう予測し、反感などを受けないようにと一歩先を思い、未然に防ぐために直接ではなく間接的な言葉として、「お声がけ」を使い始めたのかもしれません。
英語で表現するとどうなるか
英語で表現するとどうなるか、ChatGPTさんに聞いてみました。
A. from ChatGPT
日本語の「お声がけください」というフレーズは、状況に応じて「お知らせください」「連絡してください」「お誘いください」など幅広く使えます。これを英語で表現する場合、カジュアルからフォーマルまで、いくつかの適切なフレーズがあります。
カジュアルな表現:
- “Feel free to reach out!”
- “Hit me up anytime!”
- “Let me know!”
ややフォーマルな表現:
- “Please don’t hesitate to contact me.”
- “Feel free to get in touch.”
- “Reach out if you need anything.”
これらの英語表現がそれぞれどのぐらいの割合で使用されているか分かりませんが、バリエーションが見られます。日本語に比べ、ダイレクトな表現で、意味がわかりやすいです。一方で「お声がけ」の一言で複数の使い分けをする日本人というのは、賢さというか、言葉にも便利さを求める気質があるように思います。